個人移民申請のリスク【36回】

by | Mar 26, 2015 | 連載記事 | 0 comments

皆様既にご存知かと思いますが、2015年1月より個人移民申請のための新たなプログラムであるExpress Entryが導入されました。この 新しいプログラムが発足される前に移民申請をされた方も多数いらっしゃるかと思います。今回は昨年末までに移民申請をされた方々のお話をさせて頂きます。

Canadian Experience Class

数年前よりとても人気が出ているCanadian Experience Class (“CEC”)というカテゴリーですが、このカテゴリーが発足された当時と比べて申請条件は年々厳しくなってきています。一定の職種での就労経験者の申請が集中したことや、申請数が思った以上に多数であったため、条件を厳しくすることで申請者の「量より質」を重視する傾向にあります。昨年は年間を通してCECの申請受け入れ総合数は8,000件と定められておりました。その中でも、NOCレベルBの職種については一つの職種につき最大200件まで受領するとされていました。

(改行)この制限の中、沢山の人達が8,000件に達する前に移民申請をしようと日々移民局のウェブサイトの「最新受領数」とにらめっこしながら申請の準備をしていらっしゃったかと思います。弊社でも沢山の方々が1年を通してCECカテゴリーで移民申請をされました。

「8,000件に入りますか?」という質問

昨年移民申請のコンサルテーションをさせて頂いた際、大多数の方が「今申請して8,000件の枠に入りますか?」という質問をされておりました。もちろん申請をするタイミング(申請が早ければ早い程良い)にもよりますが、基本的には「絶対に8,000件に入りますよ」と保証できる人は弁護士・公認移民コンサルタントでもいないということを予めお伝えしておりました。従って「何月何日時点で移民局は何件受領しています」という情報をお伝えし、リスクをご理解頂いた上で申請準備に取り掛かっておりました。

(改行)沢山のケースを準備していると、すぐに気がつくことがありました。ご契約から僅か1ヶ月以内に申請準備が整う方、半年経っても準備が全く進まない方、準備途中で何故か音信普通になる方・・・。皆様それぞれペースは異なりましたが、最終的には8,000件に入ることを目指していらっしゃったことは確かでした。ただやはり申請が遅れれば遅れる程リスクが高くなるという注意発起は何度もさせて頂いておりました。

信じられない出来事

もう既にご経験されている方もいらっしゃるかと思いますが、昨年10月末以降にCECカテゴリーで移民申請された方の申請書が一式移民局より返送されてきています。移民局が受領したという証拠である日付スタンプはあるものの審査が開始された形跡は全くなく、レターには「8,000件に達したので審査できない、新しいExpress Entryというプログラムで移民申請をやり直して下さい」という指示のみ記載されておりました。これに関して調べたところ、何と2014年11月26日に更新された移民局のウェブサイトでは「現時点での受領数は4,537件」と公表されていたにも関わらず、実際にはその時点で8,000件を大幅に上回っていた事実が今年1月末に発覚しました。従って移民局はその事実を公表しなかったばかりか誤った受領合計数を公表し、年末までCECの移民申請を受け入れ続けていたことになります。

この件に関してはカナダのニュースでも大きく取り上げられ、「移民局が犯した最大のミス」であり公に理由を発表し説明する必要があるとされています。ただ残念ながらこの件について現時点で移民局は一切コメントを出しておりません。以前にも移民局は2008年2月28日前にFederal Skilled Workerカテゴリーで移民申請した人の申請を全て審査せず返送しており(審査の遅れを改善する・予算カットのため)、過去にもこのような理不尽な事実はございました。

今回のこの事件によって、カナダで就労しながら移民申請の審査を待つ夢を砕かれた方々や、移民申請自体を諦めなければならなくなった方々はいらっしゃるかと思います。Express Entryはとても厳しいプログラムですが、夢を諦めず、まだ可能性があるようでしたら是非トライされることをお勧め致します。今回のこの事件で影響が出た方々皆様がこのプログラムで再度移民申請できることを願って止みません。