Trudeau政権下での移民法【第41回】

by | Dec 20, 2015 | 連載記事 | 0 comments

皆様ご存知の通り、本年11月4日、Justin Trudeau政権が発足しました。彼は23代目の首相という座を圧倒的な議席数を獲得して勝ち取り、選挙のキャンペーンではカナダ国民に対し「Real Change」を約束していました。国際的にシリアの難民に対する援助が大きな課題となっている今、新しい首相であるTrudeau氏が移民法・市民法についてどのような政策を打ち出すかということは大きな注目を浴びていました。

Citizenship and Immigration Canada (“CIC”) の新しい大臣として、John McCallum氏が選ばれました。そして先日、Trudeau首相よりMcCallum大臣に宛てた指令書が公表され、このレターには今後のCICの動向について首相より詳しく指示が出されています。今回はこの指示内容についてお話致します。

注意: これらの内容については、今後議会の議論内容によっては変更が生じることも充分にございますのでご了承下さい。

首相から大臣への指示内容

Trudeau首相は「カナダの成功に貢献できる人々に対し、カナダのドアを再度開いて歓迎するべきだ」としています。また「カナダ人は皆オープンで寛容な人々であり、難民などの我々の力を必要としている人々に対し我々の心を移民法に反映させるべきである」とも述べています。カナダのドアを再度開いて、という表現は恐らくこれまでの保守党の移民法に関する政策が理不尽なものであったことを表現していると言えます。

では今回、Trudeau政権下ではどのようなアプローチが予定されているのでしょうか。指示書で述べられている具体的な案は12項目です。その中でも特に興味深いもの、印象に残るものについて解説致します。

  • シリアの難民
    既に移民局の大臣より発表があり、カナダは2015年度末までに合計25,000人のシリアからの難民を受け入れる予定であるとのことです。またこれらの難民に対して一時的な、制限のある医療サービスを提供するとも発表されています。
  • 両親・祖父母の家族移民申請
    現在、年間5,000ケースのみ受理している両親・祖父母の家族移民カテゴリーですが、倍の数、すなわち10,000ケースを受理するようにとの指示が出ています。現在このカテゴリーにおける移民審査は8年以上要しているため、どのように遅延を減らすかということも注目されています。
  • Express Entry
    本年1月より開始となったExpress Entryプログラムですが、カナダに兄弟・姉妹がいる申請者に対して更にExpress Entryの追加ポイントを与えるよう、指示が出ています。Express Entryのポイント換算については不公平である、点数の配分が現実的ではないなどの声もあり、これからも変更の可能性は充分にあると言えます。
  • 被扶養者であると定義される子供の年齢
    2014年8月1日付で22歳から19歳に変更となりましたが、これをまた再度22歳に戻すよう、指示が出ています。この変更によって「カナダ人がより多くの子供をスポンサーして移民できるように」なるとのことです。
  • 配偶者の家族移民申請、市民権申請、その他ビザ申請について
    これらの審査期間に大幅な遅延があり、効率的な審査方法について見出すことが指示されています。特にカナダ国内で配偶者をスポンサーする場合に、現在2年以上申請期間を要していることについて(その期間の長さが)問題視されています。
  • カナダにとってリスクが少ないビジネス関係の旅行者の受け入れ拡大
    ビジネス関係の旅行者の受け入れを拡大していくべきだとの記述がありますが、これはビジネスに関る取引・活動をする為にカナダへ入国する人の数は年々増加していることや、これらの人々はカナダ人の職を奪うことなく、カナダに更なるビジネスの利益をもたらしていることなどがその理由と言えます。
  • 市民権申請
    以前はカナダの市民権を取得するための条件として、カナダに移民してから滞在していた期間を計算する際、移民権を取得する前にカナダに滞在していた期間も半日と換算できていましたが、新しい市民権申請はこの条項が取り消しとなっていました。新首相はこれを復活させなさいとは指示していませんが、市民権取得の際に「カナダに住む意思がある」ということを宣誓させるなどの処置を取ること、としています。

今後について

新しい政権が発足したことで、今後移民法・市民法、そのポリシーに関して様々な改定がなされることは間違いありません。カナダに移民したい、ビザを取得したい、家族をスポンサーしたい、市民権を申請したいなどのご希望がある方は最新の情報を把握し、申請の際には充分にお気をつけ下さい。あまりにも変更が頻繁にあるので自分の情報が正しいのか心配です、という方は移民弁護士、或いは政府公認移民コンサルタントに相談されることをお勧め致します。