初めてのお客様【16回】

by | Jul 30, 2014 | 連載記事 | 0 comments

待ちに待った起業

国家試験に受かり、晴れて公認移民コンサルタントという肩書を得てから起業するまで本当に色々な事がありましたが、やっと一人で起業することとなりました。ビジネスネームの登録など法律関係の書類に署名し、名刺を作成してドメインを取得し、ホームページを立ち上げ、新聞広告も載せて、あとはお客様からのお問い合わせを待つばかりというところまで来ました。とても長い道のりでした。

初めは「どなたからもご連絡がなかったらどうしよう」などと思っていましたが、日系新聞の編集長のご厚意でインタビューをして頂いたことが良かったのでしょうか、すぐに色々な方々からお問い合わせを頂くようになりました。ワーキングホリデーでお越しの方、カナダ人の方と結婚移民を考えていらっしゃる方、ビジターでお越しの方や留学生の方。個人のお客様がほとんどでした。

一番最初のお客様

一番最初にお問い合わせを頂き、お会いしてご相談をお伺いしたお客様のことは今でもよく覚えています。それまでは弁護士の下で書類処理をすることはあっても、お客様にお会いしてご相談をお伺いし、移民法に関する法的なアドバイスを自分でしたことはありませんでしたので、その時は初めてということもあり少し緊張していました。お客様はHさんとおっしゃる方で、カナダにワーキングホリデーでいらっしゃっている方でした。お会いしてお話をお伺いするうちに、「僕は今までずっと日本でバンドをしてきて、音楽ばかりに夢中になっていましたが、今は勉学に打ち込みたいと思っています。もう20代後半ですし、日本に帰国して東大受験を考えています。」とおっしゃいました。とても大きな夢をお持ちの方で、驚きました。ただ東大を出て何をしたいか、その肝心な部分についてはご本人もあまりプランを考えていらっしゃらないようで、漠然と「大学卒業という肩書を得たい、そしてどうせならば東大に行きたい」というお気持ちだということが分かりました。そのままお話をお伺いしているうちに、「この方は本当はカナダで勉強したいのではないか」と私は思いました。彼が頑張って英語でメモを取っているのを見て、「英語をもっと勉強したいですか?」と伺うと、「実はもっと勉強して極めたいんです。」とおっしゃいました。そこで思い切って、「カナダでカレッジに行って、新しくスキルを学び、こちらで就職するのはいかがでしょう?」と提案してみました。すると彼は驚いたように「僕にそんなことできますか?でもどういったプログラムを取ればいいですか?」とおっしゃいました。目から鱗、という様子でした。

それから二人でカレッジのプログラムについて話し合いました。私自身がカレッジのプログラムを二つ卒業していることもあり、できるだけ現実的に(自分の体験を元に)アドバイスをしました。彼は「老人やメンタルケアを必要とする人達の助けをしたい」とおっしゃったので、「ソーシャルワーカーのプログラムはどうでしょう?」と提案すると、プログラムの概要をしっかりと読まれた後にはっきりと、「綾さん、僕これが勉強したいです」とおっしゃいました。その時の彼の目は新しい目標ができたときの、きらきらした目でした。心から応援したいと思いました。

その後

Hさんはカレッジで素晴らしい成績を収め、無事今年2年間のプログラムを卒業されました。今はPost-graduation Work Permitという3年間のWork Permitを取得し、数か月前に就職も晴れて決まり、ソーシャルワーカーとしてカナダで働いています。お会いしてからもう3年近く経ちますが、今でもビザの件で私の所にお越しになられています。今現在は移民申請に向かって一緒にプランを立て、アドバイスをさせて頂いています。Hさんとの信頼関係を築き、彼のキャリアについてアドバイスができたことを本当に光栄に思っています。まさに私が公認移民コンサルタントになりたいと思った事がそのまま彼のケースで達成されたような、そんな気持ちです。これから彼が移民申請をして、カナダに移民をしてソーシャルワーカーとして色々な方の手助けをしていくことをずっと応援していきたいと思っています。

公認移民コンサルタントというのは、ただ単にビザや移民申請のお手伝いをする人ということではないと私は考えています。一人一人のお客様の悩みや目標をお伺いし、ベストな道をアドバイスしたり、ビザや移民のプランを立てて提案することも私はサービスの一つと思っています。お客様が「綾さんにお願いして良かった」と思って下さるような、丁寧なコンサルティングをしようと心がけています。

次号は「ビザ・移民に関してのアドバイスをすることができる人、できない人」についてお話致します。