留学エージェントのカウンセラーという職【2回】

by | Jul 30, 2014 | 連載記事 | 0 comments

留学エージェント?

kawakita-algonquin長いプロセスを経て私自身の移民権を晴れて取得した頃、友人が留学エージェントの仕事をしないかと声を掛けてくれました。その当時、彼女も別の留学エージェントで働いており、日本人のカウンセラーを探している人がいるとのことでした。そもそも私は留学エージェントという存在さえ知らなかったので、どういった仕事内容かということをあらかじめ教えてもらい、それならできそうかも・・・という気持ちで仕事を始めました。
働き出してまず最初に驚いたことは、トロントにあるESLの学校の数でした。私はESLに通ったことがなく、そんな私が留学のカウンセリングをしていいのかと戸惑いがありましたが、沢山の学校を訪問し、生徒さんの感想をまとめているうちにそれぞれの学校の特徴が見えてきました。
新人だったこともあり、できるだけ親身に生徒さんの話を聞き、的確なアドバイスをするように心がけました。職場の同僚はみんな韓国系カナダ人のスタッフでしたがとても仲間意識が強く、私を家族のように接してくれました。

裏事情を知り・・・

仕事を始めて2年目頃から留学カウンセラーとしての職の嫌な点も見えてきました。それはコミッションのことでした。ご存知の通り、留学エージェントは学校を生徒さんに勧めて入学して頂くことにより一定のコミッションを受け取る仕組みになっています。もちろんそのコミッションのレートは学校によって異なり、またそれぞれの学校とのお付き合いもあり、次第に私はオーナーから「○○学校をなるべく生徒さんに勧めて」と言われるようになりました。彼女は学校関係者をしばしば接待しているようでした。生徒さんそれぞれの目標に合った学校やプログラムを勧めたいと思っていた私にとって彼女の要求は受け入れ難いものでした。
いくらビジネスだと言っても、学業は人の人生を左右する大きな選択であり、私はどうしてもオーナーの指示通り決まった学校のみを生徒さんにお勧めするということはできませんでした。友人にそのことを相談したのですが、彼女の勤めるエージェントではそういったことはないとのことでした。きっと留学エージェントによってビジネスのスタイルも異なるのだと思います。

今の自分にとって恥ずべき過去

その当時の仕事内容の一つに、生徒さんのビザ申請をお手伝いすることが含まれていました。主に観光ビザや、学生ビザ申請でした。ビザ申請について何も知識がなかった私は申請書の書き方だけ同僚から学び、作成し、生徒さんから署名を頂いて投函していました。その当時の私は生徒さんに「この学校に入学すれば学生ビザの期間は○ヶ月で申請できますよ」などとアドバイスをしていました。今から考えるととても恥ずかしい過去です。
2004年4月13日以降、移民法によりビザや移民申請のアドバイスをできるのは弁護士、或いは政府の協会に所属している公認移民コンサルタントのみとなり、それ以外の人がアドバイス(たとえ報酬を得ていなくても)をするということは法律で固く禁じられています。知らないということは恐ろしいことです。移民法の知識もなく、法律を扱う仕事をした経験もない留学カウンセラーの私が法的責任も考えずにビザのことを語っていたのかと思うと穴に入ってしまいたい気持ちです。
先日オーストラリアから渡加されたばかりの方とお話させて頂く機会があり、その方が「トロントは分からない事があるとすぐに留学カウンセラーに相談にいくけれど、オーストラリアはビザ申請は専門家に任せるという認識が浸透している」とおっしゃっていました。確かに移民コンサルタントの仕事を始めて以来、お客様で「エージェントにこうアドバイスされたのですが・・」とおっしゃる方が多々いらっしゃいます。申請の代行を依頼するか否かは別としても、ご自身の人生を左右することですから、やはりアドバイスは専門家に聞くべきだと私は思っています。
留学エージェントは留学のプロであるように、移民コンサルタントはビザ・移民のプロであるという認識がトロントで広まる事を願っています。

次号はキャリアチェンジをした経緯を振り返ります。