新たな個人移民申請のプログラムが発足【33回】

by | Oct 26, 2014 | 連載記事 | 0 comments

2015年1月より個人移民申請の条件が一新され、「Express Entry」と言われるプログラムが発足します。Citizenship and Immigration Canada (“CIC”) の大臣が移民法の革命であると自信を持って発表したこのプログラムは、今までの個人移民申請の方法とは全く違ったプロセスとなりますので注意が必要です。今月はこのExpress Entryプログラムの詳細について説明させて頂きます。

**尚、発足時に現時点で発表されている内容とは多少異なる可能性もございますのでご了承頂ければ幸いです。

Express Entryとは

個人移民(Federal Skilled Worker Program、Federal Skilled Trades Program、Canadian Experience Class、そして一部のProvincial Nominee Program)の申請を円滑に、そしてより迅速に受け入れるために新設されたプログラムです。申請のおおまかなステップは以下となります。

  • 移民申請希望者はオンラインにてExpress Entry用のプロフィールを作成し、就労経験、学歴、語学力、自身のスキルについての情報を入力します。
  • 移民申請希望者がカナダの雇用主よりジョブオファーを受けていない場合、政府が運営するJob Bankという求人サイトに登録をすることが必須となります。登録することにより、申請希望者のスキルを要しているカナダの雇用主との仲介が可能となります。
  • 移民申請希望者が個人移民いずれかのカテゴリーの申請条件を満たしている場合、候補者群に追加され、自身の様々な要素を総合した結果を元にランク付けされます。ランクが高ければ高いほど、カナダで今後経済的に成功する見込みがある候補者とみなされます。
  • 順位の高い候補者、カナダでの正当な雇用が決定している者、州・準州の推薦を受けた者のみに移民申請の招待(Invitation To Apply)が発行され、60日以内にいずれかの個人移民カテゴリーにて移民申請をすることが可能となります。もちろんそのカテゴリーの申請条件(職歴・語学力など)を満たしていることが必須となります。
  • ITAを受領し、移民申請した場合、6ヶ月程度で審査が完了します。

Express Entryは今までの個人移民申請プロセスのように申請期限が設けられることも、職種に応じた申請者数の上限が設けられることもありません。従って個人移民申請は早く済ませた者勝ち、という風潮は来年度からなくなるとお考え下さい。また残念ながら、Express Entryのプロフィールを作成することで移民申請の招待(ITA)を受領できるという保証はございません。

政府の意図

過去カナダの移民権を取得した人達がどの程度経済的にカナダで成功し、国の発展を助けているかということをカナダ政府がリサーチした結果、今後の移民者は「量より質」に重点を置いて受け入れることが最重要という判断に至り、今回のような画期的なプログラムが発足しました。移民権取得後に何らかの理由で経済的に成功せず、国の経済負担になることを減らす目的ももちろんあると言えます。このExpress Entryプログラムは、同じく移民を多く受け入れている国である、ニュージーランドやオーストラリアの移民プログラムを元にデザインされたと言われています。

Express Entryのもう一つの目的は、「短期外国人労働者を減らす」ことです。ご存知の方も多いかと思いますが、今年よりWork Permitの取得がとても厳しくなりました。カナダ政府としてはカナダ人の雇用を外国人から守る必要があるため、短期外国人労働者を減らして、国の更なる発展に貢献できる移民の人達を厳選して受け入れたいという狙いがあります。

Express Entryに関する世間の反応

この新しいプログラム発足に関して、政治家やパブリックの反応は必ずしも良いとは言えないようです。特にカナダの大学・カレッジに多額の授業料を支払い、最終的に移民を目指している留学生達にとってはこのニュースは悪夢であると表現されています。その理由はこれまでのように「卒業してPost-graduation Work Permitを取得し、1年間スキルを要する職種で就労し移民する」という保証がなくなったことと言えます。「カナダの学校に高額な授業料を払わせるだけ払わせて、移民はさせないというシステムはどうなのか」と反論している人達もいるようです。

また近年Work Permit取得が更に厳しくなっている傾向を考慮し、短期間の就労目的でカナダに来ている人達がカナダに来て早々に移民権を取得し、就労しているケースが増加しています。そのような人達は必ずしもカナダに永住する目的はないため、Express Entryのようなプログラムを経て移民しても本来の目的(カナダの経済発展)を果たすことはできないのではないか、との懸念も出ています。

Express Entryの強みは「カナダの雇用主が希望の分野のスキルを持つ移民申請希望者にジョブオファーを与え、最終的にカナダに来ることをスポンサーすることが可能」であると大臣は発表しておりますが、これに関しても見識のない人をスポンサーし、6ヶ月間の審査完了を待つことには無理がある、またこのシステムを悪用して違法なジョブオファーを与える雇用主が多発するのではないか、それをどう未然に防ぐのかなど、まだまだ解決すべき点があると評価されています。

アドバイス

現行の個人移民申請のルールはあと2ヶ月間で停止となります。新しい法律は例え申請条件を満たしていても、ITAをCICより受領する保証は全くございません。従って現時点で個人移民申請の条件を満たしていらっしゃる方は大至急現行のルールのもと個人移民申請されることをお勧め致します。また申請に不備があった場合には申請が却下となり、この最後のチャンスを逃すこととなります。ご心配であれば早急に移民弁護士、或いは政府公認移民コンサルタントにご相談されることがベストです。

尚、Express Entryが発足されるまでに申請したケースに関しては、これまでの法律の内容にて審査が行われますのでご安心下さい。