No. 76 – 不法滞在者をスポンサーすること

by | Aug 23, 2019 | 連載記事 | 0 comments

毎年何件かはとてもユニークなご相談内容のお問い合わせをお客様から頂きます。そのうちの一つに、「配偶者(或いはご相談者の方)が今現在、合法的なビザをカナダで保持していないのです。この状態でも移民申請をすることはできますか?」という内容のお問い合わせです。今月はこのことについて詳しくお話しします。

■申請できるかできないか

答えはYes、つまり移民申請は可能です。

但しSponsorship申請はカナダ国内申請のカテゴリーで申請しなければならず、お二人がカナダにおいて同居していなければなりません。また「カナダで合法的なステータスを保持していない」こと以外において、Sponsorshipの申請条件を満たしていなければなりません。そして国内申請では通常認められるOpen Work Permit の同時申請も、認められません。

■法律的背景

2005年2月18日にその当時の移民局の大臣が特別なPublic Policyを発表しました。その内容とは、「カナダで合法的なステータスを保有していない人が移民を申請するための条件」です。このPublic Policyはカナダの移民法(Immigration and Refugee Protection Act)における、25(1)項: Humanitarian and Compassionateについて定義されている項目に補足する形で発表されました。その内容は以下ご参照下さい。

カナダ国内にてSponsorshipカテゴリーでの移民申請を行った場合に限り、配偶者がカナダにおいて合法的なステータスを保有していなくても、条件を満たしていれば移民申請の審査を続行することとする。この目的は家族が共にカナダにて暮らすということをサポートすることにある。

「合法的なステータスを保有していない」定義については以下のシチュエーションが含まれます。(つまり以下のシチュエーションに該当する場合には、国内においてSponsorship申請を行ってもPublic Policy適応の対象にはなりません。)

  • ビザ(Visitor Record、Study Permit、Work Permit)の有効期限を越えてカナダに滞在している
  • 法律で禁止されているにも関わらず、就労・就学をした
  • 法律で提出を義務付けられているビザや書類を持たずにカナダに入国した
  • 有効なパスポートやトラベルドキュメント無しでカナダに入国した
  • 「合法的なステータスを保有していない」定義については以下のシチュエーションは含まれません。
  • カナダ国外に強制退去になり、適切なプロセスを経てカナダに再入国することが許されていない
  • 偽装パスポート、偽装ビザ、偽装トラベルドキュメントで入国した
  • 上記の理由以外でカナダ政府からRemoval Orderが発行されており、強制退去のプロセス中である

■実例

弊社でも、カナダで有効なビザを保有していないお客様がSponsorship申請をし、無事PRとして承認されたケースがございます。このケースはお客様ご自身で申請されたVisitor Record申請がRefusalとなってしまい、Restoration申請期限(90日以内)を過ぎていたためステータス無しでSponsorship申請をしました。ビザを保有していない、ということ以外には特に問題は見受けられませんでしたので、予めPublic Policyについて詳しく説明させて頂き、恐らくこのようなプロセスになります、ということをお伝えしておりました。プロセス中にお客様がカナダで合法的に就労することはできませんでしたが、Sponsorshipケース自体は問題なく9ヵ月で承認されました。

■諦める前に

パートナー(或いはご自身)のビザの状況が原因で、移民申請ができないと思い込んでいる方もいらっしゃるかと思います。どんなに難しいケースでも、何らかの方法があることもございます。諦めてしまう前に、移民弁護士或いは政府公認移民コンサルタントにご相談されることをお勧め致します。その際、コンサルテーションにおいて絶対に嘘はつかず、事実をご相談下さい。ビザが無い状態で滞在している、ビザが無いのに就学・就労している、など、全ての事実をしっかりと把握してもらった上で、カナダの移民法に則ってどのような可能性があるか、という的確なアドバイスを得ることがとても大切であるとお考え下さい。